第3話「帽子もサインもバラバラ!?自由すぎる野球チームに学んだこと」
長男が入っていた少年野球チームと、次男のチーム。
同じ「少年野球」とは思えないほど、その世界はまるで別物でした。

長男が所属していたのは、地元でも有名な強豪チーム。
スケジュールはびっしり。ユニフォームは全員きっちり揃い、帽子のかぶり方やお辞儀の角度まで決まっていました。整列してグラウンドに入場し、「礼!」の号令で一斉に頭を下げる姿は、まさに「管理野球」。小学生とは思えないほどの緊張感。親としては、正直ちょっと誇らしかったんです。
ところが次男のときに入ったチームは……
初めての練習日から、目を疑いました。

まず、練習着がバラバラ。
帽子の色もまちまちで、中にはツギハギだらけのシャツを着ている子も。さらに驚いたのは、公式戦のユニフォーム。
「これ、去年の6年生のやつなんだよ。袖、破れてるけどいいよね?」
なんて笑ってる子がいて、周りもまったく気にしていない様子。
監督も、
「試合中に破れても、お母さんが縫ってくれるから大丈夫だ!」
と真顔で言うから、思わず吹き出してしまいました。
礼儀作法?もちろん大事です。でも、このチームでは“自然体”がモットー。

試合前のお辞儀も、号令はバラバラ、隊列もフリースタイル。でも、子どもたちの顔はとにかく生き生きしていて、「野球って、こんなに自由でいいんだ!」と目からウロコでした。
練習でも「自分のペース」が尊重されます。
走り方がちょっと変でも、誰も気にしない。打てなくても怒られない。
笑いが絶えないグラウンドで、子どもたちは泥だらけになりながら、何度も転び、でも立ち上がって、またボールを追いかけていました。
そんな姿を見て、私は思いました。「これぞ“泥まみれ上等”だなあ」と。

そして試合になると……これがまた不思議なんです。
サインなんて、ほとんど誰も見てない(笑)。
監督が、
「サイン出してるんだけどな~……誰も見てねえな~」
とぼやく横で、バッターはお構いなしにフルスイング。
ランナーも好きなタイミングで走り出す。それでも、なぜかちゃんと成功する。
中でも面白かったのは、みんなが盗塁を狙ってる中、うちの次男だけがピクリとも動かない(笑)。
足が遅いのもあるけど、それ以上に「自分のタイミング」があるらしく、コーチに「行けーっ!」と叫ばれても、のそのそと立ち尽くすばかり。

見ているこちらはハラハラでしたが、監督やコーチは怒るどころか、
「まあ、それがアイツの野球だからな」
と笑って受け止めてくれるんです。
この“懐の深さ”が、このチームの一番の魅力だと思います。
上手な子も、そうでない子も、速く走れる子も、マイペースな子も、
みんなが「チームの一員」として、ちゃんと認められている。
次男もそんな中で、ゆっくり、でも確実に、野球の楽しさを身につけていったように思います。
思い返せば、長男のチームは「型にはめて強くなる」ことを目指していました。
一方で次男のチームは、「その子らしさ」を大切にしていた。
野球へのアプローチはまったく違いましたが、どちらも子どもにとってはかけがえのない経験だったと思います。
そして私自身にとっても、この自由すぎる野球チームは、
“野球の原点”――いや、もっと言えば“遊びの原点”を思い出させてくれた、そんな気がしています。

夢じいの一言:
「勝ちたい気持ちも大事。でも、笑って泥だらけになることの方が、ずっと大切な時もあるんだよね。」
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