第一話:ビリでも、ビリらしくないビリになりましょう!

陸上短距離の花形といえば、やっぱり100メートル走です。
スタートのピストルが鳴って、バーン!と飛び出すと、あっという間にゴール。スピード、爆発力、華やかさ……どれを取ってもカッコイイ。誰だって一度は走ってみたくなる種目です。
でも、この人気ぶりゆえに、高校の大会では出場制限がありました。一種目につき出場は3人まで。
オリンピックでも同じですね。もし制限がなければ、柔道なんか日本が金・銀・銅を全部取っちゃいますから。
さて、夢じいこと私も、部員が少ない年には100メートルに出てました。
でも部員が増えると……ええ、人気のない種目にまわされるのが世の常。
そうして私は、400メートル走を任されるようになりました。
ここで言わせてください。
400メートル走って、地味に見えて、実は地獄なんです。

たまに「100メートルを4回やるだけでしょ?」なんて軽く言われますが、それ、大間違い。
100メートルを全力で走ったことがある人なら分かると思います。
あのスピードで400メートル走るなんて、無謀です。無理ゲーです。
じゃあ、どう走るのか。
前半から突っ込むのか、後半に体力を残すのか、それともペースを均等に保つのか……。
走り方は十人十色。
でも、これは単なる体力勝負じゃありません。
「自分に向き合う競技」なんです。走りながら、いや、走る前から自分との対話が始まってるんです。
ちなみに私は、100メートルの終盤でスピードが落ちるタイプでした。
つまり、理論的には400メートルに不向き。なかなかの不適合者です。

でもね、「向いてない」なんて言ってしまうと、もう面白くもなんともない。
むしろ「どうすれば自分らしい走りができるか?」と工夫するほうが楽しいじゃありませんか。
試行錯誤の末、私は「前半型」に決めました。
200メートルくらいまではトップ集団にくっついていく。
そのあとは……もう歯を食いしばって、ゴールを目指すだけ!
当然、代償もあります。
レース後は、1ミリも動けません。ほんとに。

係員に「次のレースがあるので移動してください」と言われても、しばらくコースに這いつくばってるしかないんです。
でもね、それでもよかった。
順位も、タイムも二の次。
何より、「やりきった!」という満足感があったんです。
この達成感こそが、私の中では立派な“金メダル”でした。
人生だって、きっと同じです。
ずっとビリばかりじゃ、そりゃしんどい。
でも、「これは自分なりに頑張った」と胸を張れることがあるなら、それで十分じゃないですか。
どうせビリになるなら、せめて**“ビリらしくないビリ”**を目指しましょうよ。

ゴールしたあとにもう動けないくらい、本気で走る。
その姿勢が、あなた自身にしか贈れない、特別な金メダルになるはずです。
夢じいの一言:
人生の順位はつけられなくても、「全力出し切ったかどうか」は、自分だけが知っている。
それが本当の勝ちだと思いませんか?